玉乃光酒造株式会社玉乃光酒造株式会社

京都市伏見区東堺町545─2

玉乃光を知る2024.8.20 UPDATE

「オーガニック雄町」の
若き作り手のもとへ。

記念すべき「有機JAS」を取得した
“土壌づくり”から考える新シリーズ。

「いい米」を探すことは玉乃光にとっての使命です。酒米の代表的品種である山田錦や京都生まれの祝(いわい)など、日本各地の篤農家と直接やり取りをしながら、納得する品質の酒造好適米を厳選しています。中でも、備前発祥の「雄町」には格別の思い入れがあります。

備前雄町は日本最古の酒米と言われ、「山田錦」は雄町の孫にあたる品種。

2022年に誕生した「有機 純米吟醸 GREEN」は、玉乃光の新たなチャレンジとなる意欲作。「山田錦」と「雄町」の2種類があり、それぞれ有機栽培で育てた酒米のみを使用しています。

同年2月に「EUオーガニック認証」「USDAオーガニック認証」「エコサート認証」の3つを取得。そして10月1日の「日本酒の日」には改正JAS法が施行され、有機加工食品のJAS企画の対象に「有機酒類」が新たに追加されたことにより、同シリーズは日本における「有機JASの酒類」の記念すべき第一号となりました。

次世代の酒造りはもちろん、日本酒を支える米づくりを持続可能な形にしていくため、酒米の有機栽培を今後さらに広げていく予定です。

「有機JASの酒類」として認められたオーガニック日本酒「有機 純米吟醸 GREEN」。

ゆかりある雄町の有機栽培が
玉乃光と日本酒の未来を描く。

「世の中に醸造アルコールなどを添加する“三増酒”が溢れていた時代から、玉乃光は米と米麹、水だけの純米酒を造り続けてきました。今後は国内でも珍しい全量純米蔵として、 “体に優しく、そして自然と調和する製造法”を追求していきたいと思っています」とは、取締役社長・羽場洋介の言葉。「有機 純米吟醸 GREEN」は、玉乃光が思う“酒造りの未来”を体現するシリーズなのです。

「雄町」は安政6年(1859年)、備前国上道郡高島村字雄町(現在の岡山市中区雄町)の農家・岸本甚造氏によって発見された日本最古の酒造好適米。「山田錦」は雄町の孫にあたる品種です。11代当主の宇治田福時が「自分が飲んで二日酔いしない日本酒を」という思いから、昭和39年(1964年)に業界に先駆けて醸造アルコールを添加しない純米酒を復活。そして戦後栽培が途絶えていた雄町の優れた品質に着目し、岡山の篤農家と協力して栽培の復活に尽力してきました。純米大吟醸酒「備前雄町」は発売から30年を超えるロングセラーであり、玉乃光を代表する銘柄の一つ。雄町は玉乃光と深い縁で結ばれているのです。

一面、黄金色に輝く稲穂。岡山平野の南部は屈指の米どころ。

酒米の原種と言われる雄町は、倒れにくいよう品種改良されてきたイネとは異なり、170cmもの高さにまで成長する長稈種(ちょうかんしゅ)。籾もほかの品種にくらべて一粒一粒が大きく、稲穂が大きくしなりながら首を垂れているのが特徴です。倒れやすい、病気にかかりやすいといった栽培の難しさから、次第に生産量が減少し、一時はしめ飾りや鏡餅の装飾用のみに栽培されていた時代を経て、今ふたたび注目を集めています。

玉乃光は、杜氏自ら田んぼに足を運び、滋賀や岡山の農家に声をかけ、協力し合いながら山田錦と雄町の有機栽培を実現してきました。交流を深めて思いを共感していただくことで、有機栽培に取り組む農家が少しずつ増えているのです。

自身が育てた有機雄町の稲穂をチェックする岡本邦宏さん。「株式会社 岡本農産」の代表取締役も務める。

雄町の有機栽培にチャレンジする
岡山の作り手たちの思いとは。

この日向かった場所は、岡山市南区藤田。岡山平野の南部に位置し、肥沃な土壌に恵まれた県内でも屈指の米どころです。ここで「有機 純米吟醸 GREEN雄町」のために有機栽培をする2人の若き作り手がいます。1人は、同シリーズの発売当初から携わる岡本邦宏さん。

羽場社長や杜氏が彼のを複数回訪問し、酒への熱い思いを伝えるうちに、岡本さんは雄町の有機栽培に挑戦することを決めたのだそう。

「雄町を育てるのは難しいですよ。背が高くて倒れやすいし、稲穂が長く垂れ下がっているので機械で刈り取るのもほかの品種ほど容易ではありません。有機はひたすら雑草を取り続けなくてはいけないので手間もすごくかかります。でも、羽場さんと話しているうちにチャレンジしてみようと思ったんです。『岡本農産』では多くの品種の米を育てていますが、今のところ完全な有機栽培で取り組んでいるのは玉乃光さんの雄町だけ。使っている肥料はJAS認証されている有機肥料のみです。栽培の経験を積んで自分なりのノウハウが出来てきたので、今後はクオリティを上げながら少しずつ生産量を増やしていくのが理想ですね」(岡本)。

確かに、岡本さんの田んぼは雑草ひとつなく整えられ、驚くほどの美しさ。日々どれほど手をかけて育ててきたかが伝わってきます。

新たに雄町の有機栽培をスタートした「株式会社 te to te farm」の小野拓馬さん。実家の農業を継ぐ前は服飾業界で働いていたことから、オリジナルの作業着の製作も手がける。

岡本さんに続き、新たに有機雄町の栽培に参加したのが小野拓馬さん。実はこのお2人、幼なじみなのだそう。

「現在、有機雄町の田んぼは岡本さんと併せて4.2ヘクタールほど。雄町は背が高く、藁の感じも違うので、機械で刈り取るのが難しい。幹が大きい分タネも大きくて、酒米の中では最も大粒です。ええ、やはり雄町は育てづらいですよ(笑)。でも、玉乃光さんの思いに共感しましたし、岡本君と意見を交換しながら試行錯誤するのも楽しいです。有機の雄町に挑戦するにあたって田んぼを(無農薬の状態に)整えていたら、かなり昔に作っていた蓮根がまた出てきたんです。植物は正直ですよね。人はその植物の声を聞いて育てるだけです」(小野)。

小野さんの雄町の田んぼも、豊かに実った稲穂が地面につくほど頭(こうべ)を垂れていた。

体に優しく、自然環境に寄りそう
オーガニック日本酒を次の定番に。

志を共にする作り手との二人三脚で生まれた「有機 純米吟醸GREEN」シリーズ。ふくよかな旨味と健やかで透明感のある余韻はオーガニックの証です。

純米酒や幻の酒米・雄町を復活させてきたパイオニア精神を誇る玉乃光にとって、次なるチャレンジは「自然に寄りそう酒造り」です。次世代に本当に旨い酒を知ってもらうため、そして日本の自然の素晴らしさを伝えるため、オーガニック日本酒が純米酒の次なる「定番」になることを目指し、今後さらに生産量を拡大していきます。

「有機 純米吟醸GREEN」シリーズは直営の酒粕レストラン〈純米酒粕 玉乃光〉で味わうことができ、オンラインショップでも購入可能。玉乃光が満を持して世に送り出したオーガニック日本酒の豊かなおいしさを、ぜひ試してみてください。

収穫前の有機雄町の田んぼにて。作り手の岡本邦宏さん(左)、小野拓馬さん(右)、と「玉乃光酒造」取締役社長・羽場洋介(中央)。